季語 鰯雲
おはようございます。
今日は季語「鰯雲」を取り上げたいと思います。
秋によく見られるようになる鰯雲は巻積雲のことをいう言葉です。
小さな雲片が集まって、この広がりは小さいことが多いが、一端が水平線まで延びていることもあったり、また、空一面に広がっていることもあります。
さざ波に似たものや魚の鱗のように見えるもの、鯖の斑紋のようなものが見られます。
この雲が出ると鰯が集まるといい、この名前が付きました。
鱗雲や鯖雲と詠むことが出来ます。
港町だろうか、甕にあたかも鰯が入っているような例えで無風状態で動かなかった鰯雲がやっと動いた様を詠んだ句であろうか。
鰯雲が出た秋空の下、稲刈りに精を出す百姓の姿がよく描かれていて気に入った句です。似たような情景を詠んだ句があります。
鱗雲百姓地にうずくまり 岸風三楼
いわし雲亡ぶ片鱗も遺さずに 上田五千石
小さい雲が集まってできる鰯雲がサッと消えていく様子が潔いと感じて詠んだ一句ではないかと思います。澄んだ秋空に消えていく鰯雲が思い浮かびます。
鰯雲暁より鳩舎出払へり 鷹羽狩行
伝書鳩ではないでしょうか。早朝より一斉に飛び立って一羽もいない様子を詠んだ句です。
妻がゐて子がゐて孤独鰯雲 安住敦
現代風の俳句でしょうか。親父の威厳などは遠い過去のことであって、妻子も個々に行動していて、相手にされないので孤独感があるのでしょうか。はたまた、長年単身赴任をしているのでしょうか。いろいろと想像してしまう一句です。
まだまだ鰯雲の俳句はあります。
鰯雲こころの波の末消えて 水原秋櫻子
鰯雲汝の文字みな声をもつ 天野莫秋子
鰯雲炎えのこるもの地の涯てに 石原八束
町内の母を訪う夜の鰯雲 鈴木六林男
鰯雲湧く手ばたけば寄り来るほど 村越化石
今日は季語の「鰯雲」を取り上げて見ました。では。